代表者挨拶

近年の地震・噴火・洪水などの災害発生により、日本はもとより世界的規模で、人々の生命・財産をはじめ生活に直接かかわるアーカイブズ(文書・記録類)が消滅の危機に瀕している。
 私たちは、トヨタ財団の研究プログラム企画において、消滅の危機にあるアーカイブズをレスキューすることによって、社会の新たな価値を創出し、そのアーカイブズを未来へ繋げる意味が共有されるよう、アーカイブズ保存の活動を行っています。
本ホームページでは、日本全国でどのようなアーカイブズ、公文書・地域史料のレスキュー活動が行われているのか、各地の事例も含めて、ぜひみなさんに知っていただこうと考えています。
私たちは、イタリアで起きた大地震の調査も実施しました。地震により被害を受けた石造建築の古い都市は、歴史的な建造物だからといって、すぐに再建できないとのことです。その要因は、地域の「過疎化」にも一因があり、日本とも共通の問題を抱えていることを知りました。イタリア公文書館の方も「アーカイブズこそが地域の歴史を紐解く原点」とおっしゃっておりましたが、まさに地域史料の保存について、世界規模で問題となっています。
アーカイブズ・レスキュー活動は、大学や博物館・図書館・自治体の職員等の専門職の方々のみの参加ですと、地域におけるアーカイブズの役割を社会全体に伝えにくい、という現状があると感じます。やはり、地域の方々やボランティアの方々と、一緒にレスキューをしていくことが重要となるかと思います。そのような場をどう構築していくか、私たち専門職が、多くの方々と共に地域のアーカイブズ保存を実践していく中で、アーカイブズを未来へ繋げる活動から社会の新たな価値を創出し、その意味が共有されるよう、歴史的アーカイブズだけでなく、公文書公開のためにも、どのようなシステムが必要となるかといことを併せて研究していくことが求められています。
海外でもワークショップを開催し、意見交換を通じて新知見を加え、国際的観点をふまえた新たな保存技術発信へのアプローチを実践しています。そこで得られた成果を国際交流集会やホームページを利用して広く発信し、誰もが事前に考えておかなければならない災害発生時のタイムライン・行動計画や新たな紙資料レスキュー方法へ、アクセスできる環境をこのホームページで提供していきます。

青木 睦

©えくてびあん
大学共同利用機関法人 人間文化研究機構
国文学研究資料館
研究部 准教授
青木 睦

National Institute of Japanese Literature
Department of Archicval Science
Associate Professor of Archival Studies
Mutsumi Aoki