関東東北豪雨被災アーカイブズレスキュー活動

はじめに

2015年9月、台風の影響を受けて記録的な豪雨が発生しました。関東地方・東北地方の19河川で堤防が決壊し、67河川で氾濫などの被害がおきました。
9月10日には鬼怒川の堤防が決壊し、洪水によって茨城県常総市役所は建物1階が浸水しました。9月25日、代表者らは茨城県立歴史館、筑波大学はじめ茨城史料ネットのメンバーと共に、被災状況の調査を実施しました。

被災した常総市役所の永年文書庫(左)  永年文書庫内の様子(中央・右)被災した常総市役所の永年文書庫(左)  永年文書庫内の様子(中央・右)

被災状況

被災した文書の多くは、永年文書庫の電動書架に保管されていた非現用の歴史的資料でした。被災文書のなかには、町村合併時に合併前の町村より引き継いだ行政文書や合併後に作成した公文書が含まれており、行政運営の実態を知ることのできる貴重なものでした。
これらの文書は、浸水したことによって水を多く含んでいました。封筒入りの文書は、封筒の中に水が入り込み、完全に抜けない状態で長時間経過したため、封筒と文書が固着し、剥離が難しいものも見られました。また、空気に触れているところからカビが発生し、特に黒カビが確認されました。

被災した文書被災した文書

搬出・搬送・開梱・配置

9月30日よりレスキューを開始しました。電動書架を動かしながら、書架ごとに番号を付け、現状記録(写真・スケッチ、棚ごとの概要)をとり、コンテナにつめ、小型トラックで乾燥場所となる市役所敷地内の別の建物に搬送しました。乾燥場所に運び込んだ文書は、取り上げ番号を確認しながら並べました。

搬送の様子
搬送後の開梱・配置

整形・乾燥・クリーニング

水損文書は、キッチンペーパーで新聞紙をくるんだ吸水紙(キッチンペーパー新聞サンド)を間紙にし、水分を吸着する作業を繰り返しました。表紙がカビ・泥がひどい場合は、ファイルを除去してキッチンペーパーで段ボールを包んだもの(キッチンペーパー段ボサンド)で挟んだ後、縦置きにして乾燥させます。カビが繁茂している文書は、無水エタノールを75%に希釈して文書全体にエタノールを浸透させるように、洗浄しました。洗浄の際には、文書を不織布で覆い、カビが定着しているところは刷毛を使って除去しました。
なお、自然乾燥することが難しいと判断した文書は、洗浄時に覆った不織布の上に、上部に空きを作ってラップで包み、ビニール袋に入れて冷凍庫で保管し、2017年度に奈良文化財研究所の協力を得て真空凍結乾燥処理を行いました。
乾燥した文書は、開冊しながらタワシ、スポンジ、マイクロクロス、刷毛を使ってクリーニングを行います。乾燥した文書の中で洗浄する文書に対しては、綴じを外し、資料番号とページ数を、1枚ずつ文書の端の目立たないところに鉛筆で記入し、1枚ずつクリーニング、洗浄、乾燥を行ったのち、再編綴を行いました。洗浄、乾燥作業については、国立公文書館より指導を受けて行われました。

エタノールでの洗浄
キッチンペーパー段ボールサンドでの乾燥
クリーニング